あの世界の片隅で

NEWSで観たこと読んだこと経験したことの感想。Twitterのまとめも。

うこんのさくら さこんのたちばな

NEWSとはまったく関係ない独り言です。

 

 今日はひな祭り。今年も娘とお雛様を出しました。うちの床の間に飾っているのは娘が生まれた時に実家の両親が買ってくれたものです。一緒にお店に行って私が一目ぼれした素敵なお雛様。娘が将来持って行ってくれたらいいなという思いと、7段のを飾るのは大変だとか片付ける場所がとか、単に私が大変という思いがあって3段のにしてもらいました。でももちろんちゃんと桜も橘もあります。

 私が子供の時に母や姉と飾っていたのは母が生まれた時に祖父母から買ってもらったもので、7段のものでした。毎年一緒に飾り付けているのに私は桜と橘の位置がわからなくて、いつも母に「桜はどっちだっけ?」と聞いていました。すると母は「うこんのさくら、さこんのたちばなだからね」と答えるのです。最初は何のことやらわからなかったけれど、成長するにつれて「右近の桜、左近の橘」という意味なのだとわかりました。それでも毎年私は母に聞いていました。「桜はどっちだっけ?」もう私はすっかり大きくなっていて、桜は右だとわかっているけれど、母が「うこんのさくら、さこんのたちばな」と、幼い日にまるでおまじないのように聞こえた言葉を口にする時、その頃にタイムスリップするような懐かしい温かさに包まれるのが好きだったのです。

 結婚して家を出てから母とお雛様を飾ることはなくなりました。数年前からは自分の家で娘と娘のお雛様を飾るようになりました。娘が「桜はどっち?」と聞き、今度は私が「うこんのさくら、さこんのたちばなだからね」と答えます。昔の母のように。いつか娘が自分の娘と(あるいは自分一人で)お雛様を出し桜と橘を飾る時に耳の奥に「うこんのさくら、さこんのたちばな」という言葉がほんのり残っていてくれたら、それは何でもない小さなことだけれど、とても素敵で幸せなことだなと思います。

 今年のお正月に母が何年もかけて作ってくれた木目込みの小さな、でもちゃんと7段あるお雛様をもらってきたので、今年はそれも他の場所に飾りました。初めての私のお雛様です。娘がいなくなった後はこれを床の間に飾るつもりです。心の中で「うこんのさくら、さこんのたちばな」とつぶやきながら。