あの世界の片隅で

NEWS、テゴマス関係で観たこと読んだこと経験したことの感想。Twitterのまとめも。

「Skye Beautiful」からの増田貴久に関する一考察

 NEWSのアルバム「White」通常盤*1に収められている増田さんのソロ。この曲についてインタビュー等で彼はこう答えている。(太字にしたのは私)

    • 今回ビューティフルっていう単語、美しいもの、美しくいることとか美しくあるものとか美しくいるためにどうなんだろうみたいな、逆に汚れていくことの怖さじゃないけど、そういうのとかを、こんなテーマでとかいろんなテーマを伝えて作ってもらったんですけど。*2
    • 今回テーマは "Beautiful" 。自分は美しいものが好きだけど、美しいものって何だろうとまず考えました 。*3
    • もともと好きだった言葉 "Beautiful" がテーマで、美しいもの、美しくあるために…ってことを歌ったんだ。*4
    • 美しいものが好きだから、"ビューティフル" をテーマに自分が思う美について形にしてみたんだよね。"美しくいること" や "キレイな中にもある葛藤" みたいなものを詞に入れたし、美しい音にもこだわった。*5

  

 今回のソロ曲発表の前にも彼の口から「美しい」という言葉が出るのを何度か聞いたことがある。具体的には覚えていないが、一般的に人が美しいと思うもの、たとえば景色や花などだけではなく、だれかの行動やその結果が対象の時もあり、その度こういうことに対して彼は「美しさ」を感じるのかと興味深く、印象に残っていた。だから今回彼がこのテーマを選んだと知った時すんなりと腑に落ちた。

  彼は時として周囲が戸惑う程の頑固さを見せるが、その裏には「美しいか否か」という判断も一部分にあると思う。この曲は彼自身の作詞ではないものの「彼の思う美」を形にしてもらったのだから、この歌詞の世界=彼の思う「美しい」世界なのだと捉えてもいいだろう。年を重ねるにつれ "理屈を覚え" 、抱いてきた "理想は着飾られ" 、美しくいようとしても「キレイな中にもある葛藤」や「汚れていく怖さ」からは逃れられなくなっていく。それでも彼が貫こうとする「美しさ」とは何なのか。

 

 タイトルのskyeになぜeが入っているのか、私はまだ正解が見つけられずにいる(どこかで彼は話しただろうか?)。"skye" で調べると真っ先に出てくるのがスコットランドのスカイ島(Isle of Skye)で、そこで用いられているskyeはスコットランドゲール語のsgiathに当たる英語であり、その意味だと「翼」になるらしい。しかし、歌詞に出てくる "reach for the skye" を私が一番に思い浮かべる「空」を意味する "sky" と置き換えると、「大志を抱く」という意味の慣用句になる。その句に続いて出てくるのが "reach for the stars" 。こちらは「不可能と思えるものを得ようとする」という意味の慣用句なので、先ほどの「大志を抱く」にも通じる。skyでもskyeでも発音は変わらないので「空」と「翼」の両方の意味を込めたのかもしれないし、他に何か理由があるのかもしれない。個人的には両方の意味が込められていると嬉しい。空や星に向かう翼、と想像するだけで「美しい」と私は感じるから。

 正解が何にしろ、顔を上げて自分の上方に広がる美しいもの(空や星)を見つめ、困難でもそこにたどり着こうとする、あるいはそこに向かっていくためのもの(翼)に手を伸ばし得ようとする、そういう姿勢にも彼は「美しさ」を感じているのではないかと考える。3つ目に出てくる "reach for the light" が「植物が光を求めその方向に育つ」という意味であることからも、そう思えてならない。

 

 「語彙数は画素数と一緒。多いほど精密に正確に伝わる」と金田一秀穂氏は言う。忌憚なく言えば、彼の語彙数は決して多くはないし、むしろ彼の年齢を考えると少ない方だと思う。テレビ番組などでのコメントを聞いている時には正直もっと語彙を増やした方が、と心配になることさえある。しかしそれは一方で彼の魅力にもつながっている。彼自身が描き生み出す世界は画素という視点から見ると粗く、拙ささえ感じる時もある。しかし数歩下がって全体を見るとそこには驚くような世界が広がっている。まるで印象派の点描画のように。彼は言葉以外の引き出しが多い人なのだと思う。たくさんの引き出しに彼が日々の暮らしの中で「美しい」と感じたものが宝物のようにしまってあり、いざという時そこから取り出して組み合わせたり混ぜ合わせたりして描く世界の素晴らしさにいつも驚かされる。

 もちろん、だからと言って語彙を増やさなくてもいいというわけではなく、多種多様な語彙に触れ、彼なりに取捨選択したものをより多く引き出しにしまっていければ、さらに彼の世界は深く広くなっていくのではないかとは思うが、それによって今の彼らしい色を失う怖さも背中合わせにあるので、そのあたりは何とも言えないところではある。ただ、この1年出演していた「いっぷく!」でハコちゃんこと岩下尚史氏が語る美しい日本語やそれにまつわる話を週1回とはいえ隣で聞けたことは、彼の引き出しを増やし充実させるために貴重な経験だったはずだ。

 

 この曲に関してではないが、彼が最近インタビューで言った言葉で読んだ瞬間震えたものがある。「本当の自分は何色でどんな自分?」という質問に答えたもの。

  • ベージュかなあ?原色ではないし、白や黒でもなくふわっとしてる感じ。たくさんの色を足していくと黒になるから、黒ではないと思うんだよ、絶対。いらない色はハジいてきてるから、黒にはならない。でも、白でもない。いろんな色が入って、ピュアな部分が強ければ白に近い色は保てる。で、保った結果がベージュ!*6

 今まで「いらない色はハジいてきた」結果が今の彼だ。流されることもぶれることもなく、自分の感じる「美しい」色を信じ、能動的に選択してきた結果が今の彼なのだ。周囲から様々な色を提案されたことは何度もあっただろうし、その頑なさを批判する声も聞こえていたはずだ。それでも今まで彼はその時々で自ら判断し「保って」きたのだ。

 そんな彼がここ最近メディアで今まで見せなかった表情を見せ始めている。彼が感じる「美しさ」が変化してきたのだろう。今まで見せなかったのは、単に見せたくなかったから、見せた結果を怖がっていたからではなく、見せることに「美しさ」を見出せなかったから。けれども様々な経験や出会いを重ね、彼にとっての「美しさ」も少しずつ変化し(それは誰にも起こる当然のことだが)、色々なものを「脱ぎ捨て」「振りほどいて」いくことに「美しさ」を感じるようになったのだと思う。

 これからの彼も今までと変わらず、自分がその時感じる「美しさ」を信じ、自分の中に「美しい」色だけを取り込みつつ「白に近い色」を保とうとしていくだろう。その色は時として黒に見えること、あえて黒であるかのように見せてくることもあるかもしれない。しかし、それは自分の信じる「美しい」色を内に取り込み自分の足元を固めながらはるか上空の光を見上げ、その高みにたどり着こうと飛び続ける、意志のある「ベージュ」だ。そしてそういった現状維持と挑戦のあり方こそがきっと彼にとっての「美しさ」なのだ。

 

 

*1:<iframe src="http://rcm-fe.amazon-adsystem.com/e/cm?t=marchh-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B00SAOMSBC&IS1=1&ref=tf_til&fc1=000000&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>

*2:bayfm78「増田貴久 MASTER HITS」2015年2月6日放送

*3:『月刊Songs』2015年3月号

*4:『Myojo』2015年4月号

*5:『With』2015年4月号

*6:WiNK UP』2015年4月号