あの世界の片隅で

NEWSで観たこと読んだこと経験したことの感想。Twitterのまとめも。

NEWS『神様になりたいわけじゃない』に思うこと

 2021年6月30日にNEWSの新曲『BURN』がリリースされた。『BURN』はアニメ『半妖の夜叉姫』壱の章第2クールオープニングテーマで、初めて放送された時からずっとリリースを待っていたので、嬉しい。シングル曲としては初のかっこいいゴリゴリのロック。けっこうファン以外の方からの反響も大きいようでまた嬉しい。今回のリリースは初回盤A・Bと通常盤の3形態。『BURN』はもちろん、どの盤のカップリング曲も全部いい。3人の素敵な楽曲がどんどん増えていって、それもまた嬉しい。嬉しいしか言ってないけど、本当に嬉しいから仕方ない。Twitterの感じだとどの盤にも収録されている『鳴神舞』が大人気なのかな。もちろん『鳴神舞』は私も好きなんだけど、初回盤Aに収録されている『神様になりたいわけじゃない』がもう本当に好きで好きで。初回盤にしか入っていないのが本当にもったいない。1年ぶりの増田さんお誕生日おめでとう記事を書いたあと、勢いのまま感想を書き始めたら自分でもびっくりするほど長くなってしまったし、思考が螺旋階段のようで恥ずかしいけど、もうこれが私の思考力の限界なのでこのまま載せる。

 
 そもそもシングルの詳細がわかった時から『神様になりたいわけじゃない』というタイトルに心惹かれていて、いったい誰目線での歌詞なのかとか色々想像を巡らせつつ発売日を待っていた。初めて聴いたのはいつものように出勤の車の中。こんな歌詞だったのか!と衝撃を受けた。職場に着いてからもすぐには車から降りずに歌詞カードをきちんと読んで、ああここはこうだったのかと納得して。帰りの車の中でも次の日からもリピートしまくって、きちんとは理解できないままいくつものフレーズに涙がにじんだ。そういうことを繰り返すうちに少しずつ思いが言葉になってきた。


 作詞したのはNEWSの3人ではなくてヒロイズムさんと篠原とまとさんだけど、これは3人のリアルな心情の吐露で、3人からファンへのラブレターというか、所信表明というか、ファンと自分たち自身の背中を押すメッセージというか、そういうたくさんの想いが合わさったものとして私は受け取った。こういう余白の多い歌詞は聴いた人が自分のその時の状況に合わせて受け取ることを許してくれていて、だから私が今回そう受け取ったのは、「今」の私がそういうふうに受け取りたいんだと思う。


 「~わけじゃない」というのは現状や直前の発言から予想されることを否定するときに使用する文型で、たとえば「もやしが好きじゃない」と「もやしが好きなわけじゃない」の違いを考えたらわかりやすいかな。「もやしが好きじゃない」は単なる否定文だけど、「もやしが好きなわけじゃない」は例えば「私は毎日もやしを食べている」という現状があるけど、そこから普通に予想される「もやしが好き」ということを否定している文。「毎日もやしを食べてるから好きなんだって思われるだろうけど、そうじゃないんだよ。節約のためなんだよ」とか、そういう含みのある文。
 この歌詞がNEWSの目線で書かれているとして、彼らが「(自分たちは)神様になりたいわけじゃない」と否定する時、その元になる現状はやっぱり「ファンの人たちはアイドルの自分たちを神様のように遠い存在として見ている」ということだろう。そして彼らはそういうファンの気持ちはわかっているけど「僕たちはみんなの神様になりたいわけじゃない」と否定していると考えられる。じゃあ彼らは何になりたいのか。今までも、そしてこれからもどこを目指してどんなふうに進みたいのか。

 
 歌い出しの「忘れていたほんの小さなこと」は「ふいに心に思い出すあの日」のことだろうか。だれかと一緒に未来を信じたあの日。でも別の明日へ向かった人達もいる。それはその時には確かに「雨が降る」ようなことだったけど、「さっき淹れた珈琲」のように時間が過ぎると忘れてしまう「所詮通り過ぎるstep」になっていく。雨が降っているときは冷たくて暗くて、ずっとこんな時が続くような気がするけど、やまない雨はない。辛いことや大変なことがあっても、また陽は昇る。夜明けがやってきて、光に包まれる。でもただ俯いてやりすごすだけじゃだめで、願う明日を迎えるためには大切なことがある。


 私が色々な場面で背中を押してもらう大好きなNEWSの楽曲は最近まで『フルスイング』『U R not alone』の2曲だったけど、そこにNEWSが3人になってからの『CHANGES』が加わった。この3曲と今回の『神様になりたいわけじゃない』は曲調こそ違うけど、私の心の同じ所に刺さりまくるので、『神様になりたいわけじゃない』を他の3曲とついリンクさせて聴いてしまう。以下、どの辺がどの楽曲かいちいち書かないけど、わざわざこんな文章を読みに来てくださっているあなたにはきっと伝わると信じて書いてみる。


 「あの日」は「いつも何か飢えて小さな獣みたいだった日」。いつも満たされなくて、そんな中で信じた未来を追い続けていた日。「信じてみたあの日の未来は露と消えたの?」は単なる疑問じゃなくて反語だと思う。消えたの?ううん、消えてないよ、って。「信じてみたあの日の未来」は「消えない虹」だ。やっぱり消えない虹なんかなかったの?結局露と消えちゃったの?ううん、違うよ。虹は消えたんじゃないよ。あの日一緒に虹を追いかけた人たちは別の虹を見つけてそちらに歩いていっただけ。自分は今もココで立って、あの虹を追い続けている。自分だけの未来、自分だけにある明日を。でもそこに辿り着くためには「重ねた指や愛おしい日々」だけじゃ足りない。今は別々の未来に向かった人たちと過ごした「あの日」を見つめるだけじゃ足りない。変わらないものばかり気になって俯いてしまっても「昨日に光はない」。大切なのは、未来はこの願いが叶う場所だと信じて前を向くこと。

 

 前を向く原動力となるのがNEWSと生きているファンなんだと、この楽曲を通してNEWSの3人から言われているような気がした。私はそう受け取った。「今」のNEWSに想いを寄せて応援しているファン。私達。そんなファンと生きる「今」のNEWSの「今」の想い。彼らが目指したいのは神様なんていう次元の違う遠い存在になることじゃなくて、ファンの想いと共に生きて未来へと進んでいくことなのかな、どうか一緒に進んで行ってほしいという彼らの願いなのかな、と。そして同時に思った。そんなの言われなくてもそうするよ。そんなの、するに決まってる。


 「STORY」ツアーオーラスのサプライズで流れた「ドームへ連れて行ってね、ドームへ連れて行くよ」というファンの声。連れて行ってね、だけじゃなくて、連れて行くよ。どれだけのファンの今の想いを代弁していたことか。そして歌詞の中で何度も繰り返される「tonight」。この夜にNEWSとファンのみんなは一緒に生きている。そして陽はまた昇る。何度でも。そのことを今のNEWSも私たちももう知っている。明けない夜はないんだって。これまで何度も一緒に朝日を迎えてきたから。


 「昨日」にはもう陽が昇ることはない。きらきらした思い出の残照が名残惜しくて、離れがたい思いもあるけど。「夢だと言ってよ、嘘だと言ってよ」っていつまでもそこに留まっていたくもなるけど。でも「昨日」から変わりたくなくて、想いを「昨日」にだけ寄せていたら、結局その「昨日」は駆け抜けただけの無意味なものになってしまう。「昨日」が意味なき日々にならないようにするために、前を向く。「チームNEWS」で想いをひとつにして。

 
 私が歌詞カードで確認したかったのは「見知らぬナイフが集まって 今日も誰か傷つけたって 見ないフリして 星空見上げ 綺麗だと呟けばOK?」の文末に「?」があるかどうかということだった。ここに「?」があって嬉しかった。ここも私は反語だと思う。そうやってやり過ごすだけでOKなの?ううん、違う。やり過ごすだけじゃだめ。じゃあどうすればいい?

 この2年、本当にいろんなことがあって、辛くて大変だった。今の私たちの生活もNEWSに関することも全部どこか現実感がなくて嘘なんじゃないか、悪い夢のなかにいるんじゃないかって感じることも何度もあった。でもそういう「嘘みたいな真実」さえも通り過ぎてしまえば「昨日」になる。NEWSとファンとが一緒に「夢みたいなとき過ごせたら」明日は変わる。あの日夢見た未来を作れる。作れると信じて、懲りずに「One drop」。

 歌詞に2回出てくる、この「One drop」も何だろうってずっと考えてた。直訳すると一滴。何の一滴?考えて考えて私が見つけた答えは「涓滴岩を穿つ」。わずかな水のしずくも絶えず落ちていれば岩に穴をあける。小さな努力でも、長く続けていれば大きな成果が得られる、困難なことでも成し遂げられる。それを信じて、懲りずに一滴を落とし続ける。


 最後の “きっと上手く行く” は確信に満ちたエールだ。前を見て進めば世界は変えられる。そのために力を貸してくれるのは「昨日までの僕」。前を見て進み続ける人たちにとっては、今までの困難を乗り越えてきた自分こそが一番力を貸してくれる味方。だけど「僕」は決して自分という一人の人間だけじゃなくて、乗り越えてきた自分の近くで想いを寄せてくれた人たちも含まれると思う。それも含めて今の自分なんだと。そんな自分の「ヒストリー」を無意味なものにしないために、前を向く。世界から見たらほんの小さな一滴かもしれなくても、落とし続けることで未来を作る。世界を変える。彼らは神様みたいに遠い存在で崇め奉られたいんじゃない。同じ世界で、ファンと一緒に生きていく存在でいたい。そのためにこれからも一滴を落とし続けていく。NEWSとファンのチームで。 

 そして、それは “きっと上手く行く” 。